「あっちむいてほい」をすると、必ず指した方向を向きます。僕が笑うと、ロンもきゃっきゃと笑います。ああ…赤ちゃんて素直で最高に可愛い。
そんな感じで僕がロンと遊んでいたら、ベンが来て、「アッチムイテホイって何?」と聞いてきました。
「『じゃんけんほい』みたいな子供のゲームだよ。アメリカにはないのかい?」
「じゃんけんはあるけど、あっちむいてほい、は知らないな。どういうルール?」
「簡単さ、指でさされた方向をむいちゃいけないってだけ。つられないようにするのがコツだよ」
「ふーん…」
「やってみるかい?それ、あっちむいてホイ!」
ちなみに僕とベンは普段は英語で会話しています。この時も、『あっちむいてほい』以外は英語でしゃべっていました。僕は左を指さしましたが、ベンはスッと反対を向きました。ルールはすぐ理解した模様。
「よし。じゃあ今度は俺だね」そう言うと、ベンは日本語で、
「うーえむいて、ホイ☆」
と言いました。僕は上を向くまいとして思いっきり下を向きました。
ベンの指は、下を指してました。
くそ、まんまとやられた…。
にやりと笑ってるベンの顔を下から見上げて、僕はめっちゃ悔しくなりました。
あっちむいてホイ歴・わずか五秒の、日本語も拙い相手が、いきなり「上向いて~」とか言いながら下指すような高度な引っかけ技くり出してくるなんて、思わないじゃないか!ずるい!
…いや、分かってますよ。全然ずるくないです。なめてかかった僕が悪いだけです。
正直言うと僕、ベンや外国人の友達が少し舌足らずな日本語を使うの聞くと、赤ちゃんみたいで可愛いな…なんて失礼な事、つい心の中で思ってしまうんです。けど、どっこい!本当は、相手は僕よりか何十倍も頭の切れる、大の大人なんでした。
「冬一郎ちゃんは本当に素直だね」ベンの奴は僕を鼻で軽く笑って英語で言いました。
「赤ちゃんみたい。まったく可愛いんだから」
ぐうう。むかつくけど、何も言い返せない…。
僕、一生こんな風にベンにからかわれながら暮らすんだろうか。