第0.5回クラブミーティング、その3

2020/11/03

チーズフォンデュクラブストーリー

ミカエルの車は5分もせずにやってきた。

ベンが助手席に飛び乗ると、ミカエルは即座に発進させながらたずねた。
「タバスコ野郎が、冬一郎に、何をしたって?」
「わからない」ベンは短く答えた。頭の中は怒りで煮えたぎり、うまくシートベルトが締められないくらいだった。
「奴の作ったカレーを食べたら、突然、倒れたんだそうだ」
「毒でも盛ったっていうのか?」
「くそったれ」ベンは口汚く罵った。「あの野郎め。妙なビラをばら撒いて、俺のプライベートを街中の外国人に触れ回ったと思ったら、今度は一体何だ、俺のパートナーを殺す気か?!同性愛者に恨みでもあるのか。そうでなければ、俺がたった一回、チェスでこてんぱんにしてやっただけで、こんなことーー!『お礼をしたい』『健康的な料理を教える』なんて訳の分からない理由を信じて、冬一郎ちゃんを行かせるんじゃなかった。冬一郎ちゃんは馬鹿みたいに人がいいから、たとえ毒だって何も疑わずに食べたに違いない!」
「ベン」
ミカエルはぐっとアクセルを踏みこんだ。
「俺がついてるぜ。ドイツにいる友達は、毒物専門の化学者だ。すぐそいつに連絡とるからな」
「ミカちゃん…ありがとう」
ベンは頭を抱えて、呻くように礼を言った。


ナタリアに教わった住所について車を駐めると、家の庭に彼女が立っていた。子供を抱っこしている。黒い髪と大きな目が印象的な男の子だ。ひと目で、ラジャの子供だとわかった。
「ナッちゃん!冬一郎ちゃんはどこだ?」
「ベン、大丈夫よ」
駆け寄りながらベンが勢いよくたずねると、ナタリアは電話で話した時よりずっと落ち着いた調子で、笑顔さえ見せて答えた。
「ラジャさんとゆずちゃんが、すぐに病院に連れて行ってくれたわ。たった今、連絡が来たけれど、何でもないって。ちょっと疲れが溜まってただけらしいの。すぐ帰ってくるって言ってたわーーおお、おお、キーリン君も、落ち着いてね。泣いちゃあダメよ、ママもパパも、すーぐ戻ってくるからね。いい子して待っていましょうね」
キーリン君と呼ばれた子は、ナタリアの腕でぐずぐずしていたが、ベンとミカエルが近づいてくるのを見るや、大声を上げて激しく泣き出した。両親がいないところへ、見知らぬ男たちーーそれも体が大きく、顔を非常に厳しくしかめている男たちがやってきたのだから、怖がって当然である。無垢な子供を前にして、ベンもさすがにそのままでいるわけには行かず、必死に怒りを飲み込んで、努めて表情を柔らかくした。

大泣きする子供

「この子は君の子じゃないね、ナッちゃん。娘さんは?」
「エミリア?ああ。あの子はね。…今日は、おじいさんとおばあさんのところで、遊んでいるわ」ナタリアは目をそらした。一瞬、彼女の顔が悲しそうに曇ったことは、ベンもミカエルも気が付かなかった。
「そうだ、ベン。ロンのお迎えの時間と場所はわかるの?」ナタリアはぱっと顔を上げ、明るい調子に戻って聞いた。「どこかのデイ・ケアに預けているんでしょう?冬一郎がさ、うわ言みたいに、お迎えの時間、お迎えの時間って言ってたのよ。私が代わりに行ってあげてもいいけれど、どうする?」
「うんーーそれは、ありがたいけれど」ベンはちらと腕時計を見た。まずい、もうあと30分もない!
「俺が行こう」ミカエルが言った。「人見知りしないロンだって、全く慣れない人間が迎えにきたら、さすがに怖がるぜ」
「いやーー2人とも、ダメだよ」ベンは首を振り、ため息をついた。
「今日利用しているデイ・ケアは、実は、初めてのところなんだ。何にも事情を聞いていないところへ、いきなり顔も似てないガイジンが来て『ロンをよこせ』なんて言ったら、怪しいことこの上ないよ。せめて、責任ある俺が行かないと」
ベンは、初めて会う保育士たち相手に、日本語を使って、自分と冬一郎とロンの関係を説明しなければならない場面を思い、非常に気が重くなった。日本人である冬一郎がいない、それだけで、物事は急に何倍もやりにくくなる。保育園側は、冬一郎と話したがるだろう。せめて冬一郎が、電話で事を説明できるくらいの状態ならいいがーー。

車のバックする音がして、一同は驚いて振り向いた。
庭の駐車場に、家主の車が戻ってきたのだった。

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