真夜中のパスタシリーズの続きです。
あらすじ:アメリカ人のベンは、僕と時間の感覚がだいぶ違います。彼が料理をすると、食事が出てくるのはだいたい真夜中です。ある日もまた、僕は夜中に揺り起こされました。
先日、ベンがまたパスタを作ってくれました。
例によって、食事が出てきたのは真夜中でした。
まあ、最初からこうなる気がしてたので、僕はロンにはさっさと別のものを夕飯として与えて寝かしつけました。子供の食事も全部作ってくれるっていうんならありがたいとも思いますが、そうでない上に、午前1時に突然起こされる方の身にもなってほしいものです。
「あのさあ…どうして君が料理すると、出てくるのが真夜中になるの?」
パスタの皿を前に、僕は聞きました
「んー、なんでかなあ?」
こちらの不機嫌もどこ吹く風、ベンはにっこり笑って言いました。
「夜中なら君とゆっくりできるから、かな。ほら、ロンちゃんが起きてると慌ただしくて、なかなか2人だけの静かな時間って取れないじゃあないか」
よく言うよ、君はいつ見たって呑気で優雅で、慌ただしさのかけらもないくせに。バタバタするのはいつだって僕の役だ。
なんだか返事する気にもならなかったので、僕は黙ってパスタを食べました。
見た目はなんということはないシンプルなパスタでした。フェットチーネと呼ばれる、きしめんの様な幅広の麺に、白いクリーム状のソースが絡まっていました。具は、ほうれん草が言い訳程度の彩りになっているのみ。僕はなんの期待もせずにパクリと口に入れました。
その途端です。これ以上ないほど濃厚でクリーミーな至福の旨味が、口いっぱいに広がり、僕は頭を殴られたくらいの衝撃を受けて思わず叫びました。
「ベン!!ベン、この白いパスタソースは何だ?!めちゃくちゃうまいよ!」
「だろう?気に入ったかい?」ベンは満足げに、「君のために一から手作りしたんだよ。秘密の材料を知りたい?」
「知りたい!教えて!」
僕が勢い込んで頼むと、ベンはそのきれいな青い眼でこちらを見つめ、思わせぶりに微笑みました。
「愛。だよ♡」
…。
風が通り抜けました。
「冬一郎ちゃんてさあ、冷ったいよな!!」
僕のリアクション(のなさ)に腹を立てたベンが忌々しそうに言いました。
「本当に俺のこと愛してんのかな?こないだもスパゲティ作ってあげた時、わんわん物語のキスぜんっぜん乗ってくれなかったしさ。俺だって傷つくんだからな」
「いいから、普通に材料教えてくれるか?」
僕も同じくらい腹を立てて言い返しました。だいたい、わざわざ真夜中に起きてまで食事に付き合ってやってるのが、愛でなくて何だというんだろうか。おかげで明日(いや、もう今日か…)は僕は絶対に寝不足でふらふらだ。僕だって仕事頑張ってんだぞ、君よりずっと稼ぎは低いけどな。
最高に美味しいパスタをはさんで、なぜか僕らは険悪な雰囲気でにらみ合いました。
ベンのパスタレシピ1 スパゲッティアンドミートボール