真夜中のパスタシリーズ、フェットチーネ・アルフレードの話の続きです。
あらすじ:僕は夜中にベンの作った絶品パスタを食べながら彼と喧嘩しています。
「止そう、真夜中に喧嘩なんか。馬鹿らしいよ」
僕は言いました。
「そうだな」
と、ベンも渋々と言う感じに言いました。
「せっかく君と楽しく食べたいと思って、愛を込めて作ったんだからな。よし、じゃあ、今から君に、アメリカ料理の基本三か条を教えてあげるよ」
「うん、いいね。そういうの教えてくれよ」
僕は思わず期待して身を乗り出しました。するとベンは指を三本出し、
「1、バターを使う。2、ベーコンかチーズを使う。3、カロリーは気にしない。以上」
と言いました。
「何だよ、それ?」
再び肩透かしというか、予想外の答えに僕は苛立ちました。ベンはぶっきらぼうに、
「アメリカ料理を美味しく作るコツだよ。今日のパスタの材料が知りたいんだろう? その1、バターだいたい1スティック」と言いました。
1スティックというのはアメリカで一般的なバターの単位で、だいたい120gくらいです。これは、バターたっぷりのリッチなパウンドケーキを一台焼くのに十分な量です。僕は驚いて思わずベンを凝視しました。彼は構わず、
「その2、生クリーム。だいたい1カップ使ったかな」と言いました。
彼の1カップはアメリカサイズなので240ccです。日本で一般的な生クリーム1パック(200cc)以上使ったということです。1パックあれば15cmくらいのケーキなら丸々一個塗りたくってデコレーションもできるくらいのクリーム量です。
「その3、チーズ。パルメザンチーズ一本、新しいのあけて全部入れた」
パスタやピザにかける粉チーズ。あれ、僕は一本使い切るのに数ヶ月かかります。それを一気に丸ごと全部入れたというのです。
「ピザを一台埋め尽くしても余る量のチーズだぞ?」
僕は信じられなくて何度も聞き返しました。
「ちょっと待ってくれよ!! バターに生クリームにチーズって、動物性脂肪高カロリー三大選手を、その量全部使ってるのか?」
ベンがにこっと浮かべた不敵な笑みに、僕は背筋がぞっとしました。