バナナズ・フォスター、その5

2021/09/16

チーズフォンデュクラブストーリー

バナナズ・フォスターの続きです。

☆アダルトな内容の話が含まれますので大人の方のみお読みください。

前回の話



数時間が経った後の事です。

僕は、疲れ果てて死にそうに思いながら、ベッドに突っ伏していました。

やっとのことで体を起こし、仰向けになって時計を見上げると、針はもうすぐ真夜中をさそうとしていました。僕は、裸のまんま隣に転がっているベンに、切れ切れの息をつないで声をかけました。

「ベン」

「うん」

「その、誕生日」

「うん」

「おめでとう」

なんとか彼の誕生日であるうちに言い終えて、僕はふーっと長いため息をつきました。時計は12時を打ちました。

ーーロンは、どうしてるだろう。

僕は思いました。

ーー泣いていないかな。ミカさんはーー

「ありがとう」ベンが笑いました。「いま終わっちゃったけどね、俺の誕生日」

「そうだね。ごめん、ベン」

僕は素直な気持ちで謝りました。セックスの後というのは不思議で、人間、なぜかとても正直になれるものです。

「僕さ。実いうと、帰る直前まで、君の誕生日のこと、すっかり忘れてたんだ。ひどいよな。許してくれるかい」

「ふうん、やっぱりそうだったのか。本当にひどいな。いやだね、俺は許さないよ。うん、一生、許すもんか」

言葉では僕を責めつつも、ベンの声音には、とても甘い響きがありました。よく見れば、ベンの口元は、わずかに優しく緩んで弧を描きはじめていました。彼のチャームポイントであるその魅力的な微笑みが、少しずつ顔中に広がっていって、やがてにっこりと虹のように大きく輝いたのをみて、僕の胸にも希望が湧きあがりました。

「本当にごめん」僕はもう一度謝りました。「お願いだから許してくれよ。償いは必ずするからさ」

「よーし、じゃあ、たっぷり償ってもらうからな。一生かけて」

冗談めかしながらベンが言いました。そのとたん、僕らのお腹が、グーっと2人同時に派手に鳴りました。

僕もベンも、思わず一緒に吹き出して笑ってしまいました。

「ああ、お腹空いた。冬一郎ちゃん、疲れてるとこ悪いけど、何か食べるもの作ってくれないかいーーもうそれで許すからさあ」

僕はもちろん、喜んで引き受けました。だって、初めから彼のために料理するつもりでいたのですから。

「いいよ。パスタはどうだい? 実は今夜試そうと思ってたレシピがあるんだ。きっと気にいってくれると思うんだけど」

「へえ、それは楽しみだな。簡単なのかい?」

「大丈夫。いつも台所にストックしてある材料でできるんだ。15分もかからないさ。今すぐ作るよーーそれにしても」

寝室を出ながら、僕はちょっとベンを振り向いて苦笑いしました。

「どうして君と2人で食べるパスタは、いつも真夜中になっちゃうんだろうなあ?」

彼は答えず、ただにっこり笑い返しただけでした。


真夜中のパスタ

バナナズ・フォスター1

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