バナナズ・フォスター その6 (プッタネスカ、1)

2021/09/19

チーズフォンデュクラブストーリー

バナナズ・フォスターの話の続きです。

☆アダルトな内容が話に含まれますので大人の方のみお読みください。


これまでの話。僕はパートナーのベンのため、真夜中にパスタを作ることになりました。
前回:バナナズ・フォスター その5


僕は、湯気を立てるスパゲティを、きれいに皿に盛り付けて、ベンの前に出しました。

「わお」彼は喜びました。

「ありがとう。すごく美味しそうだ。これ、オリーブの実かい?」

うん、と僕は得意になりました。

「そうさ。君のおつまみ用のグリーンオリーブの瓶から少し使わせてもらったよ。君はオリーブが好きだものな、だからこれを作ったんだ」

ベンはソースをひとさじすくって食べ、ん〜!と感心したようにうなりました。

「おいしいよ、冬一郎ちゃん。酸味と塩気のバランスが最高だ。疲れが吹っ飛んで元気が出てくる。ひょっとして君のオリジナルのレシピなのかい?」

「まさか、違うよ。マリさんにもらったレシピ集から見つけたんだ」

珍しく料理を絶賛してもらい、僕はますます得意になって、胸を張りました。

「スパゲティ・プッタネスカっていうのさ」

ぶっ!とベンが口の中のものを吹き出しました。僕がびっくりしていると、ベンのやつは袖で口をぬぐいつつ、僕の方を見つめてなぜかニヤリとし、やがて、堪えきれなくなったのか、大口開けてゲラゲラ笑い始めました。

「プッターープッタネスカだって…あははははは!」

「何が、そんなにおかしいんだよ」

僕は、一緒に笑っていいものかも分からず、困惑するばかりでした。ベンはひとしきり笑った後、涙をふき、

「まさか、今日このレシピを作れって、マリちゃんが勧めたわけじゃないだろうな」と聞きました。

「違うよ…さっき言ったろ、君がオリーブを好きだから、君を喜ばせようと思って、僕が選んだんだよ…」

「んん、そうか。ありがとう。すごく喜んでるよ、俺」

ベンは再び、ニヤニヤと笑いながら僕を見つめました。

「本当に元気が出てきた。ーー食べ終わったら、また、セックスするかい」

「しーーしないよ!」

「なぜさ。誘ってるんだろ」

「誘ってるもんか。何言ってるんだよ」

僕は完全にお手上げ状態でした。ベンが喜んでくれているらしいのはいいのですが、狙ってないような変な方向に解釈されてはたまりません。

「降参だよ、ベン。なぜ笑ってるのか教えてくれよ、恥ずかしくなってきたよ」

「分かったよ。ちぇっ、なんだ、誘ってる訳じゃないのか。少し残念だな、ふふ」

ベンはパスタをくるくるフォークで上手に巻き取って食べながら答えました。

「君は知らないみたいだけどさ、Puta、というのはスペイン語では『娼婦』という意味なんだよ。多分イタリア語でも一緒さ。同じラテン系だからね」

ベンは、実はスペイン語を少し話せます。以前、ナタリアさんとベンが楽しそうにおしゃべりしているのをそばで聞いていた際、僕の頭の理解が追いつかず、ネイティブ同士の英語はやっぱり早すぎて僕にはついていけないんだな…と内心凹んでいたのですが、実は2人は、南部訛りに加えてスペイン語まで織り交ぜて会話していたからなのだと、後から気付きました。

「しょ…ああ…そ、そうなのかい?プッタネスカって、じゃあ…」

「うん、娼婦のパスタってことになるね」

ベンはにっこりしました。

「セックスの前後に食べるのにはぴったりってことかな。んー、美味しい、俺は同意するね。ああ、そういえば、天空の城ラピュタっていうアニメ映画あるだろう?あれさ、アメリカの翻訳版では、ラピュタという名前は一切でてこないんだよ。だってさあ、お空に浮かんでる、誰も見たことのない素敵な場所、伝説のLa Putaーー」

今度は僕がぶっと口の中のものを吹き出す番でした。純粋な善意で作ったトマトパスタと、無垢な少年だった頃から大好きな冒険映画とに、急に妙にエロティックな意味合いが追加され、僕の脳内には、セクシュアルな謎のイメージが作り出されて離れなくなりました。

「やめてくれよ」僕は恨めしくなって、ベンを睨みました。

続きます


プッタネスカのレシピ

バナナズ・フォスターシリーズ、1

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