☆「最高のパンケーキ」の話の続きです。
前回の話:最高のパンケーキ、その3
これまでのあらすじ。冬一郎とベンは、ベンの嫉妬が原因で大喧嘩をし、冬一郎は夕飯用のウグンスパンカーカ(オーブンパンケーキ)を焦がした。遅れて帰宅したミカエルは、ベンを探すべく、再び外に出た。
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ミカエルは電話をかけた。
「ベン? 今どこにいる?」
ああ、ミカちゃん、とベンは答えた。君こそどこにいるんだよ。俺は君ん家にいるよ。キッチン借りてる。
「ああ、そうだったのか。待っててくれ、今帰るから」
ミカエルは電話を耳に押し当てたまま、くるりと踵を返して、今来た道を戻りはじめた。
「君が一人で夕食をとりに出かけた、なんて冬一郎が言うから、探しに行こうとしていたんだ。喧嘩したみたいだが、大丈夫か?」
「別に平気さ。誰とも喧嘩なんかしてないよ」ベンはぶっきらぼうに言った。
「ただ、やっぱり君にあの書類を押し付けたのは、悪いと思ったからさ。研究室に戻ったんだよ。でももう君の姿はなかった。君は夕飯は食べたの、ミカちゃん?冬一郎ちゃんと話したってことは、彼のパンケーキを食べたのかい」
「いや、食べていない」
「なぜ? 君に教わったスウェーデン風だって、嬉しそうに作ってたんだぜ」
「なぜも何も。黒焦げだったんでな」
あははは…!電話の向こうでベンが笑った。そのあと、ガチャンと音がして、声が聞こえなくなった。
「もしもし?ベン?」
「ごめん。スマホ落としちゃったんだ。大丈夫、壊れてないよ」
ベンはさっきまでと打って変わって楽しそうな声だった。
「生地の中に落ちなくて本当によかったよ!卵と牛乳でベタベタになった携帯なんて最悪だし、パンケーキ焦がした冬一郎ちゃんのこと、俺も全然笑えなくなっちゃうもんな」
「もしかして、パンケーキを作ってるのか、ベン?」
「そうさ」
かちゃん、かちゃん、と軽快な金属音がした。フライパンだろうか。
「早く帰っておいでよ、ミカちゃん。腹減ってるだろ。俺はもう、最初の一枚を焼き始めるところさ。ついでに、冬一郎ちゃんも呼んであげてくれるかい? かわいそうに、彼きっと凹んでるね。ロンはお腹空いてないかな」
ああ、今すぐ行くよ、とミカエルは答えた。
僕らのパンケーキストーリーシリーズ↓