3月ももうすぐ終わろうとしています。今月はレシピを書き込むどころか、きちんと毎日ご飯を作ることさえままなりませんでしたがーーでも、パートナーのおかげで、1日だけ、素敵なひとときを持つことができました。
3月14日です。一体、何の日だったでしょうか?
答えは…
パイ(π)の日です。えへ。
今年も、ベンは僕のために美味しいパイを作ってくれたのです。
正直、僕は、恐ろしいニュースや他のことで頭がいっぱいで、そんな事さっぱり忘れていたので、彼がオーブンから温かいパイを出してくれた時は、本当に心から驚いて、感動しました。
アップルパイと並ぶパイの王道、クラッシックなブルーベリー・パイでした。
缶詰のブルーベリーでも構わないのに、ベンはわざわざ生のブルーベリーを探して手に入れてくれたようでした。
「でも、ブルーベリーの量が足りなくてさ」と、ベンは悲しそうでした。
「すごく小さいパイになっちゃったんだ(←実は手のひらくらいはある)。ごめんよ。前と比べて愛情が減ったなんて思わないでくれよ、本当は去年のアップルパイみたいに、うんと豪勢に巨大に作ってあげたかったんだから」
ベン自身は、加熱されたフルーツ類はあまり好みません。チェリーパイは好きですが、アップルパイは嫌いだし、ブルーベリーパイも積極的に食べようとはしません。でもパイの日だから、僕のために特別に焼いてくれたのです。もちろん僕は、ベリーが好物のミカさんやロンちゃんにも、切って分けてあげようとしたのですがーー
「ダメ。これは俺から冬一郎ちゃんへの贈り物なんだから、切らないで君が全部食べるんだよ。こんな小さいパイならできるはずさ」
と、ナイフを入れることすらベンに止められてしまいました。確かに彼の料理にしては小ぶりですが、とはいえ僕一人で食べるには十分大きいように思えたので、
「これを切らないで一人で食べるのはキツイな。日本の節分の恵方巻きみたいだな」と僕がつまらないことを言うと、
「節分?ーーああ、2月の、魔除けの儀式だっけ?」
「うん、魔除けというか、恵方巻きは、幸運を呼ぶ食べ物ってとこかな」
「そういう迷信みたいなの、日本人は好きだよな」
若干苛立たしげにそう言った後、しばらくして、ベンは考え直したように、
「まあ、いいか。最近は何もかもが、ツイてないからね。幸運を祈って食べるのは良いかもしれないよ」と、弱々しく笑いました。
なんだか、彼の笑顔を見たのが久しぶりなような気がして、僕は切なかったです。食べ始めると、パイはあたたかくてサクサク、ブルーベリーはふっくらジューシーで、噛むと甘くて熱い汁が飛び出てきます。もう、めちゃくちゃ美味しくて、あっという間に僕一人で平らげました。世界中で僕だけがこの幸せを独り占めしている、と思うと申し訳なくて泣けてしまうくらいでした。
ブルーベリー・パイのレシピ
材料(小一台人分)
☆フィリング
ブルーベリー(生) 300g
レモン汁 小さじ2
砂糖 60g
コーンスターチ 20g
シナモン 小さじ1/4
バター 15g
☆パイ生地
薄力粉 150g
砂糖 大さじ1
塩 ひとつまみ
ベーキングパウダー 小さじ1/2
サラダ油 40g
ギリシャヨーグルト 60g
作り方
1 パイ生地はお好きなもので構いません。ベンのパイ生地はバターたっぷりの折込パイですが、今回は分量が謎なので、僕がよく使うヨーグルトを使った練りパイの生地のレシピを参考に書いておきます。なお直径13.5cm、高さ5cmのガラス製のパイ皿一台分です。小ぶりで深さがありました。
2 大きめのボールに薄力粉と砂糖、塩、ベーキングパウダーを合わせ、泡立て器で混ぜます。サラダ油とヨーグルトを加え、へらにもちかえてざっくり混ぜます。適当にまとめ、2:1に分けます。
3 パイ生地をのし棒でそれぞれ広げます。バター(分量外)をぬったパイ皿に大きい方をセットします。
4 別の小さいボールに、フィリングの材料を全て入れて、軽く混ぜたら、パイの中に入れます。バターをちぎって上に散らします。
5もう一枚のパイ生地を細く紐状に切り、パイの上に格子状にのせます。
6 200度に予熱したオーブンで1時間15分程度焼きます。フィリングがグツグツ煮えてればオッケーです。