アメリカ料理食育日記@日本

国際育児クラブの子育て漫画と、アメリカをはじめとした世界各国の家庭料理レシピ

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チェスと日本社会とタバスコと1【漫画】

「僕の知らないところで」シリーズの続きです。

今シリーズも、語り手「僕」が登場しません。話は僕らのストーリーの時間軸の数週間前に遡ります。また、ベイクトズィティを作るところから始まった長い夜の話の一番最後、「僕の知らない会話」シリーズにもつながっています。

 

これまでのあらすじ。

「タバスコ野郎」が「チェスの件」に絡んで冬一郎を探しているらしい…。「タバスコ野郎」に関するベンの回想。

 

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ロンがロタウイルスという感染症にかかり、嘔吐と白い下痢を繰り返している。
症状はだいぶ落ち着いてはきたものの、熱もまだ上がったり下がったり油断ならない。冬一郎が会社を連続で休みすぎて、同僚から酷いバッシングをくらったらしく、このままでは辞めさせられると悩んで泣いていた。
「そりゃ僕の仕事なんか、君やミカさんのに比べたらつまらないかも知れないけど」と彼は言った。
「それでもフリーターみたいなのに戻るのは嫌なんだ。今の所クビになったら、次僕をまともに雇ってくれるとかなんか絶対ない」

ーーこんな時は俺が、彼とロンを助けなければならないのに。ベンは料亭の便所に隠れながらもどかしく唇を噛んだ。
タイミング悪く日本で開催されている国際学会と急に舞い込んだ米軍絡みのプロジェクト話のせいで、ベンとミカエルの勤める研究所は大いに湧きたっていた。上司の長瀬が、ベンの休暇希望をはねつけたばかりか接待の席にも出るよう強く言い出した時、ミカエルが助けの手を差し伸べてくれた。
「ベン。ロンの看病は俺がするから、心配しないでいいぜ」と。

ベンはミカエルの携帯に電話をかけた。
「ミカちゃん?ロンの様子どう?」
ミカエルは丁寧にロンの様子を伝えてくれた。少し熱も下がって機嫌も良いらしい。このウイルスは下手すると大人にも感染するため、オムツの処理や汚れ物の消毒に気を使ってくれているそうだ。
「本当にありがとう」ベンは心からミカエルに礼を言った。「今日プレゼンまで抜けてくれたんだろ。ステファンだけで大丈夫だったかな。後できっと文句たれるだろうな」
「俺の事は気にするなよ、ベン」ミカエルが優しい声で答えた。「それより接待のほうはどうだ?日本式の接待なんだろ?大変だな」
「もう帰りたいよ!」ベンは思わずこぼした。「夕飯終われば帰れると思ったのに、まだ続いてるんだ。一体いつまで拘束されるんだ?」

 

長瀬はお猪口に酒をつぎ、目の前の賓客に勧めた。アメリカ人ながら、相手は慣れた様子で会釈をして、くいとあおった。日本文化にはよく通じているらしい。通訳の女性を脇に控えさせているものの、こちらが言うことも、どうやら大体分かるようだ。何でも、最近若い日本人女性を妻に迎えたばかりだとか。自信に溢れた微笑みを常に浮かべているあたり、大変なやり手とみえる。

「ところで長瀬さん」ラジャが口を開いた。「あなたの研究所は、世界中から優れた研究者を集めているそうですね。中でも一番の切れ者というのは誰なんですか?」
「ははは、うちはとにかく精鋭揃いなんですよ」長瀬は答えた。かくいう私も東大の理学を首席で出ておりますがね、と思わずいつもの癖で言いかけたが、すぐ言葉を飲み込んだ。切れ者というなら、このアメリカ人こそ相当の切れ物なのだ。自分達のアピールをしつつも、相手のプライドをうまくくすぐらなければならない。上手くいけば、開発中の新しい暗号技術の強力なスポンサーを確保できる。
「しかし、そうですな。最近の若いのの中では、今日お供に連れてきたベンジャミン君が、断然秀逸な、期待のルーキーですよ。ご興味をお寄せいただいているプロジェクトも、彼にリーダーとなってもらっています。ああ、どこ行ってたんだね、ベンくん」
席を立っていたベンが戻ってきたのを見て、長瀬は客の前の席を譲った。
「さあ、ここに座って、アメリカ人同士、ラジャさんのお酌をしてさし上げたらどうなんだね」

ベンは膝を曲げ、苦労して掘りごたつに両脚を押し込んだ。長瀬が座っていた生温かい座布団も気持ち悪かったし、日本酒も苦手であるし、大体、なぜ相手の、ケチなほど小さいグラスに常に気を配って、空になるまえに注ぎ直すという非効率な作業をくりかえさねばならないのかが分からない。酒をふるまうのなら、最初から大ジョッキにたっぷり注いでやればいいではないか。
「ベンジャミン君」ベンの様子を面白そうに見ていたラジャが言った。
「君、チェスはできますか?」
「はい」ベンは簡潔に答えた。「好きですよ」
「素晴らしい」とラジャ。「実は私も腕に覚えがありましてね。どうです。勝負しませんか」
「おおー、面白い!」長瀬が言った。「iPadのアプリでチェスを探しましょうか?」

ラジャはふっと不敵な笑みを浮かべた。

 

続きます。

 

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前シリーズ↓

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ロンがロタウイルスにかかった話が出てきます↓

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 思い返してみるとこれが色んなことのきっかけだったかもしれない↓

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